「たけくらべ」は、農民から成りあがった没落士族の娘である樋口一葉の貧困生活と、父より受け継いだ文才が相俟って生まれた作品である。上流の生活ばかりを題材にする当時の閨秀作家達の中にあって、一葉が底辺に生きる人々の生活に目を向けた時、彼女の才能が開花した。「たけくらべ」には、近代化による時代の激変に翻弄されざるを得ない低層の人々の生活が色濃く反映されている。