「古都」には、作者川端康成の、「伊豆の踊子」から続く主題(単独者の孤独と、連帯への夢)が秘められている。「古都」の主要人物たちは、京都の土地を守る四神になぞらえられており、作品中のエピソードにそれを裏付ける多くの暗示がある。例えば捨子に引け目を感ずる孤独な千重子が、周囲の人々との協調関係を獲得していく過程が、千重子が嵯峨野散策する行程に如実に反映されている。