「ごんぎつね」に書き込まれた、一見本筋とは関係の薄い中山城主の話や茂平という老人の設定が、実はこの作品の主題を暗示している。主人公の兵十が火縄銃を持っていたのは、城主が農民に、害獣駆除のために許可を与え農地を開墾させたためだし、猟師であった茂平は、ごんや兵十と同じ孤独な独身者だったと考えられる。茂平がこの、似た者同士・敵対者同士という関係から生まれたすれ違いを語ることが、作者南吉の郷里に存在した村同士の対立への諷刺と和解への願いを反映している。