キーワード:山田詠美、ベッドタイムアイズ、小林秀雄、肉体、思い出、記憶 米軍脱走兵と場末の歌手との自堕落な同棲生活を描いたこの作品は、文芸賞を受賞しながらも、ともすれば単なるスキャンダラスな風俗小説と受け取られる傾向がある。しかし登場人物の名前や愛称に重大な象徴が盛り込まれているなど、職人芸的な造り込みがされているだけでなく、日本近代文学史上に現れた、表現のリアリティをめぐる主題を受け継ぎ、それに答えようとする実験をも含む作品である事実を論証した。