キーワード:伊豆の踊子、川端康成、裸体問題、近代日本
共同湯から裸で走り出してきた踊子を見て子供だと悟る有名な場面には、従来気づかれなかった裸体風俗に関する「私」の誤解がある。近代日本の裸体問題は幕末下田に始まり、天城峠と下田にはさまれた南伊豆で歴史的な意味を持つ。この地で生じた裸体をめぐる文化相克の状況が、大正十五年に発表された「伊豆の踊子」の物語世界に影を落としている。 また、「私」の無自覚や自己満足が批判的に語られる様相に注目点する従来説に対し、批判されるべき対象が実は「栄吉」であり、むしろ背