キーワード:ごん狐、権狐、ごんぎつね、火縄銃、中山様
「ごん狐」の元原稿と思われる「権狐」に残された、物語の語り手、語られた場所、物語の時代設定などの、物語成立にかかわる情報のうちに、この物語の悲劇的な結末の由来が隠されていることを論証した。兵十が火縄銃をもっていた理由を明らかにするとともに、「中山様と云ふお殿さま」が登場する理由、「権狐」が宝蔵倉の前で語られた理由、兵十が背戸川(矢勝川)で鰻をとる理由が、すべて「ごん狐」の舞台となった地域に歴史的に存在した紛争と関わるものであり、南吉がその紛争を批判す