大正期を代表する大衆雑誌『キング』に多数掲載された、立身出世の夢を掻き立てる記事群は、殖産興業という明治以来の国策を支援する性格を持っていた。小説の向こう側に作者の偉大な「人格」を読めという論調がその一典型で、これは、芸術鑑賞を人格陶冶の強力な手段として打ち出し、それによって国民の程度を高め、国策に沿った経済効果をあげるという、明治期芸術教育論がとってきた手法を吸収したものだった。 単行本論文集