京極夏彦『魍魎の匣』には、作者のミステリー論が埋めこまれている。作者は、いわば霊能者と同じであり、読者をだましてでも最終的に読者を救済すればよい。すなわち、読者の心の迷いを晴らしてやればよい。そのために、順序だった情報公開が必要である。すなわち、巧みなプロットで読者を、ある“理解”の境地に導けばよい。以上のように京極は言う。人々を救済する実態とは、プロットの作用そのものだ、と主張しているのだ。