日本では1票の重みの最大較差を2倍未満にすることが政策目標とされてきた(これを2倍基準と呼ぶ)。本稿では一般的なケースに対象を絞り「較差=2倍」を境に議席配分の問題がどう変質するかが分析され、以下の2点が明らかにされた。①1議席の移転、総定数の1増、2地区の合区という最小限の手段により2倍超の最大較差は必ず縮小できるが、2倍未満のそれは縮小できるとは限らない。②最大較差2倍超の最適配分(所与の地区数・人口分布・総定数の下で最大較差を最小化する配分)は一意に定まり、全体的な平等性の点でも大きな瑕疵は無いが、最大較差2倍未満の最適配分は複数存在可能であり、そこには明らかに不平等な配分が含まれうる。これらの事実は、最大較差の縮小という政策目標の達成が「較差=2倍」を境に容易かつ有益なものから困難かつ有益とは言い難いものに変質することを意味し、「2倍基準」を実質的に根拠づけるものと結論された。