キーワード:天演論、進化論、厳復、丘浅次郎、魯迅
論文は、近代の日中にとって、共に時代思想ともいうべき通念となった進化論(社会進化論)の位相をとらえたものである。厳復の『天演論』が多くの清末人士にとって、社会進化論の最初の衝撃となったにも関わらず、関連訳著がその後の中国では刊行されなかったため、「進化」系統の訳語、すなわち日本語文献の進化言説が清末から民国の中国語世界に及んでいったことを示し、特に日本における進化論紹介者の第一人者たる丘浅次郎の魯迅にたいする影響を、具体的事例を挙げつつ検証している