善導はその著作である五部九巻において、「往生」のかわりに「還」「帰」「還帰」と表記することがある。生死輪廻を断ち、はじめて浄土に往くはずが、なぜ「還帰」などとされるのかを解明する。これらの用例は11あり、うち10例が礼讃偈に用いられていることから、詩文学作品における韻律としての、また詩語としての配慮であり、そこには教理にとらわれない教化者としての善導の姿を見ることができるのである。