室町期、幕府はじめ地域権力が禅宗に強い関心を抱き、禅寺を建立し、五山僧に代表される高僧が多く招かれたが、大蔵経請来もこうした武家権力と禅宗との関わり、すなわち武家による禅宗への強い関心、傾倒といったロジックの中に押し込められ、請来の目的そのものについては十分に顧みられていない。本報告では、当該期の大蔵経輸入を輸入の主体となった武家権力の視点から考えるとともに、輸入の実務を支えた外交組織との関わりを考察する。