ミュリエル・スパークの小説の舞台となっているのは、そのほとんどがスコットランド以外の場所であるが、例外的に故郷エディンバラと強く結びついている作品が、奇しくもスパークを名実ともに人気作家にした『ミス・ジーン・ブロディの青春』(1961)である。自伝『履歴書』(1992)からもわかるように、この小説は多分に自伝的要素の強い作品となっているが、単にエディンバラでの学生時代と昔の恩師に対するノスタルジアの思いをつづったものではないし、また舞台が偶然にエディンバラであって、他のいかなる場所でも構わないということで