本稿では、日記といっても文学性を帯びたものではなく、古代の人々が実際に記した現物=自筆本の「日記」を分析の対象とした。 この「日記」は多くの場合、暦(具注暦)に記される。そこで本稿では、日中における実際の「日記」の事例を取り上げつつ、その記載内容よりも、なぜ暦(具注暦)に記されるのかに重点を置いた。その結果、当時の「日記」文化の基底には、暦によって日々の吉凶を占うという、古くから中国に存在した「術数文化」の影響があることを明らかにした。