東晋期を代表する思想家、慧遠(334-416)の三世報応の思想を扱う。インドにおいて輪廻の思想は深く広く浸透し、無我を説く仏教もある程度輪廻の考えと接近せざるをえなかったが、仏教が中国に入ると、中国人は過去現在未来の三世の観念こそが仏教の中心の思想であると考えるようになった。慧遠は三世を説いて人々に善行を勧めるとともに、三世を経巡る現象的主体に中国古来の「神」を導入して論を展開している。