一気に段階を踏むことなく悟りに到達することを頓悟という。この頓悟を最初に提唱したのが道生(?-434)であり、謝霊運(385-433)はその説に賛意を表して「弁宗論」を書いた。そこで道生の頓悟説と謝霊運の「弁宗論」とを中心にして、その両者の頓悟説の同異について論じた。 頓悟説には次の二つの要素がある。(1)究極の真理は分割できないものであるから、悟りは段階を踏むことなく一気に成就される。(2)それは仏性によって可能となる。 道生は(1)と(2)とをともに重視する。しかし謝霊運は(1)は重視するけれど