劉宋の慧琳の生涯と思想とについて論じる。慧琳は劉宋の武帝、文帝時代の人。文帝に深く信頼されて、黒衣の宰相とよばれた。元嘉12年(435)前後に「均善論」(一名「白黒論」)著し、儒教を代表する白学先生と仏教を代表する黒学先生との対論を通じて、仏教の空、無常、三世報応の理念を現実主義な立場から批判。また奢侈にはしる仏教界の現状に警鐘をならした。当時の仏教の中心思想と考えられた三世の考えを退けたため、仏教界から強い批判を受けたが、文帝によって擯斥を免れる。「均善論」の発表は、いわゆる神滅神不滅の論争をさらに白