本研究の最終年度にあたる21年度は、昨年度に引き続く調査等の作業を以下のとおりおこなった。
第一点目は、『大陸日報』<文学>関連記事および小説等の調査とデータベース化の作業である。学生アルバイトとともに年度末までに関連記事の調査を終えた。一部データベース作成に着手したものの、完成まで至っていない。引き続き作業を進め、22年度中に成果を発表する予定である。
第二点目は、カナダにおける現地調査である。10月26日~11月5日および2月26日~3月13日にそれぞれカナダに出張し、バンクーバーおよび、トロント、オタワの各施設において資料収集し、また、現地日系カナダ人への聞き取り調査をおこなった。とくに本年度に注目したのは、日系カナダコミュニティにおける日本語学校の位置と機能の問題、さらに、第二次大戦中および戦後の日系紙の変遷についてである。前者については、日本語学校に付属していた図書施設「晩香坂日本文庫」の実態調査を中心におこない、オタワの国立図書資料館(National Library & Archieves) とバンクーバーの国立日系カナダ人博物館ほか各施設の調査において、さまざまな一次資料の収集をおこなうことができた。この成果は、研究年度終了後の22年度中に論文にまとめる予定である。ただ、非常に残念であったのは、カナダとトロントそれぞれで聞き取り調査の途中であった日系カナダ人二世の方2名が21年末に相次いで亡くなってしまったことである。いずれも戦中戦後の日系社会の日本語環境の変遷を知る上で重要な体験をお持ちであっただけに惜しまれてならない。
20年度にともにバンクーバーの現地調査を行った連携協力者の上谷順三郎(鹿児島大学教授、日本語教育・言語政策面の調査を担当)、日比嘉高(京都教育大学准教授、米国の日系移民との比較研究を担当)とともに、新たな資料の報告も交えながら、成果報告会を2月11日に鹿児島大学で開催した。