前年に引き続き、『大陸日報』掲載記事の精読と文芸関連記事の抽出を行うとともに、合わせて、とくに第一次世界大戦前後における日本とカナダ日系コミュニティの関係を中心に、カナダ側の英語文献資料を収集し、従来の移民研究の幅をさらに拡げるよう努めている。また、前年度のカンバーランドでの調査をふまえて、河原典史編『カナダ日本人移民の子供たち─東宮殿下御渡欧記念・邦人児童写真帖─』(三人社)の新刊紹介を執筆した。
2018年4月26日から5月4日にかけてバンクーバー市に赴き、日系移民に直接関連した国立日系カナダ人博物館およびガルフ・オブ・ジョージア缶詰工場歴史資料館などを訪問して資料調査を行うとともに、バンクーバー市立図書館で英文資料の閲覧と収集を行った。
その成果の一端は、10月に専修大学での講演「戦前期カナダ日系移民の文学環境について」において発表した。
また、2019年2月26日から3月8日まで現地調査に赴き、前半は、オタワ市のカナダ国立戦争博物館およびカナダ国立図書館・文書館、トロント市のトロント日系文化会館などの関連施設において資料収集と、日系カナダ移民研究の現状視察を行った。後半は、バンクーバー市において、前回4~5月の調査に続き、バンクーバー市立図書館で英文資料の調査収集を行った。
上記のとおり、第一次世界大戦前後にターゲットを絞って、『大陸日報』掲載記事と英文資料とをつき合わせる作業を行うとともに、前年に続いてカナダ現地で調査を行うための環境把握に努めた。次年度以降の研究を進めるための、関連施設における資料保存の現状を知るとともに、『大陸日報』記事の同時代状況について、多角的な検討を行った。