実施初年度である令和3年度は、引き続くコロナ禍のため、夏に対面による研究会の開催を模索したものの、最終的にその開催を断念し、オンライン開催の可能性を探ることになった。試行錯誤の結果として、令和4年3月27日に第1回研究会をオンラインにて開催した。この第1回研究会では、各メンバーが本研究にどのように参画できるかについて、つまり本研究におけるそれぞれの役割分担について全体で確認した。そのうえで研究代表者のほうより、本研究の趣旨説明も兼ねて「環大西洋における極右諸勢力の思想的動向とその宗教的前提」と題した報告をおこなった。 この報告では、2021年1月6日にアメリカ合衆国の連邦議会議事堂で発生した事件を撮影した動画を手がかりとして、どのような政治的あるいは宗教的シンボルが、旗やプラカード、ないしはワッペンやTシャツ等のかたちをとって現場に持ち込まれたのかについて、それらシンボルの解読を中心に検討をおこない、参加者と意見交換をおこなった。これにくわえて報告では、事件に参加したプラウド・ボーイズ、オース・キーパーズ、スリー・パーセンターズら極右過激主義の諸団体の思想的背景を考察した。とくに報告の後半では、今日の極右過激主義にとって重要なテキストとしてみなされているウィリアム・ルーサー・ピアース(William Luther Pierce)の小説『ターナーの日記(The Turner Diaries)』の一部を分析し、その分析をつうじてこのテキストに通底している反ユダヤ主義を明らかにした。