病院や社会福祉施設における身元保証問題の解決に向けて,医療福祉の現場では様々な取り組みがなされているが,いまだ実践課題は定まっていない.それは,身元保証問題にかかわる支援の実態が明らかにされる一方で,支援のあり方を規定する当事者の生活実態が明らかにされないためではないか.方法論を検討する前提として,生活実態に基づく対象論が必要であると考えている.本研究では,身寄りのない患者の生活実態を明らかにするなかで,社会福祉学としての身元保証問題の視座について考察した.身元保証問題を有する患者の多くが,労働問題を背景とし低所得貧困問題を基底とする重層的な問題を抱えていた.身元保証問題という契約上の認識にとどまるのではなく,これを貧困問題と認識した取り組みが求められる.身寄りのない患者が無権利状態にある現実にあって,民間機関との多方面の連携にとどまるのではなく,公的施策を求める実践の展開が必要になる.