児童虐待や貧困,孤立死等の深刻な社会問題をはじめ、子育て支援や高齢者・障がい者の介護等、日常生活の中には多様な福祉的課題が発生している。社会全体の複雑化、多様化、グローバル化が進む今日、支援を必要とする対象やサービスは、量的な拡大と質的な複雑さを増している。わが国にはこうした課題の解決のために、様々な福祉的支援のメニューが整備されてきたが、単にサービスや制度が増大するだけでは、真にニーズを有する当事者達に、その支援の手が差し伸べられるわけではない。そこで、注目したのが、自助・自己責任が声高に言われる今日、多様な福祉的課題を抱えながらも他者に支援を求めない、あるいは支援を求められない当事者たちの存在である。また、与えられた支援を受け入れるだけの必要な力を当事者が有しているのかといった視点も含めて、当事者の特性を考慮に入れた上で支援のあり方を検討する視点を見直し、研究を積み上げることが求められている。そこで、本稿では、福祉的課題を抱えた当事者の「支援を求める力・受け入れる力」の可能性に着目し、自助・自己責任の時代における新たな支援のあり方を構想することを目的に考察した。