M-GTAは人と人との相互作用から、データに密着した理論を生成する研究法である。本稿の前半部分では、筆者(眞砂)のM-GTA研究のスーパービジョンの経験を加えて、M-GTAを用いた社会福祉実践に関する研究を行う際に必要な事柄について、M-GTAにおける「研究する人間」という考え方を軸に検討した。後半部分では、知的障害者福祉施設創始者の伝記等を用いてM-GTA手法を援用して鍵概念を生成し、鍵概念から当事者家族の手記の分析を行った筆者(滝沢)が研究事例を紹介する。この研究事例について、文献データの分析に加え、手記という主観のデータの分析についてM-GTAの主観と客観の関係で検討を試みた。これらのことから、当事者や家族の実践である質的データについて「主観客観の往還」を絶えず行いながら、「研究する人間」を基軸に研究法としてのM-GTAの考え方に沿って丁寧に分析を行うことにより、社会福祉実践についてのボトムアップ理論を作り出すことの可能性について提案した。