『万葉集』巻9・高橋虫麻呂『詠浦島子歌」は、「常世」と「家」を対置させる構造となっている。不老不死の永遠の生命が得られる「常世」に到達しながら、「家」への執着心によってそれらを手放し、死に至る浦島子の姿が、語り手の「現代」にも共有されるアクチュアルな人間のありようとして描かれる作品である。