大津皇子詩歌には、黄葉を錦に喩える表現がみられる。これは歴史的に突出して早い例であり、かつ漢籍における黄葉は、揺落と衰退の象徴であり、豪華絢爛な錦に喩えられることはない。大津詩歌の表現は、花が咲き誇る春山のあでやかな美や、輝く川面の美などを錦に喩える漢籍の表現を、黄葉の美的表現に応用して、独自に創りだされたものと思われる。