万葉集巻八の大津歌と懐風藻の大津詩とは、黄葉を錦に喩える表現を共通して持っている。巻八歌は、中国仙境説話を受容し、仙女=「をとめ」への憧憬と幻想とを原動力とした創作がにわかに盛んになる八世紀において、大津詩をもとに仮託されたものではないかと思われる。