藤原宇合「在常陸贈倭判官留在京」詩には、常陸国を塵外の仙境として、俗世の中心である都に対置させる発想と、地方赴任を自らの才能に対する評価として理解する思想とが見出される。宇合は、古代中国の隠逸をめぐる議論と、中国の史書などに見られる、地方官吏への抜擢を才能に対する評価とする考え方とを受容し、国司として常陸国赴任を、自らの才能に対する評価として捉え、常陸国という仙境における脱俗の境地を、本詩で詠じたものと思われる。