古代中国の狩猟の詩賦には、狩猟や宴会の描写を通して、天子の権力の誇示と、君臣関係の秩序が描かれる。それに対して大津皇子「遊猟」詩は、宴会において、参加者との融和的関係を確認し、並列関係で時空を共有する連帯感を表出する。古代中国の漢詩創作が遊猟と同様に、序列関係に基づく政治性の強いものであったのに対して、大津皇子の漢詩創作は連帯感の醸成を意図するものであったと見られる。