『万葉集』巻六所収の高橋虫麻呂歌(972)における「男」字は、特に考察されないまま、「ヲノコ」と訓じられ、立派な男と解釈されている。しかし、上代文献の仮名書き例は「ヲノコ」が一例しかなく、「ヲトコ」が圧倒的に多いこと、また「ヲノコ」が天皇との従属関係を表す語句として用いられていることから、当該歌「男」字は「ヲトコ」訓じられるのが適当だと考えられる。