およそ6世紀から20世紀にかけて、中国、朝鮮半島、日本に、歴史的事件に巻き込まれ悲劇的末路を辿る知識人の「臨刑詩」が残されている。大津皇子「臨終詩」もその一つである。正史には残されないそれらの臨刑詩は、口承文芸における歴史語りの中で、知識人の最期を語る類型的表現が生み出され、中国五代以降に盛んになる「講史」において再生産されたものと思われる。稗史の想像力が生み出したものと言える。