本論文は、戦前日本におけるJ.A.コメニウスの言説に関する包括的調査研究の一環である。19世紀半ばの日本において国民国家形成の主たる担い手の一つであった国民教育制度が確立されると、17世紀のチェコの思想家コメニウスが近代教育の先駆者として紹介された。その過程のより詳細な検討は、日本における西洋教育の受容をより深く理解するために期待される。
1945年までに刊行された教育関係を中心とした書籍や雑誌の調査を通じて、筆者は、これまでの調査では触れられなかったコメニウスに関する30以上の論文を発見した。本論文シリーズでは、筆者はそれらをリストアップし、コメニウス解釈が変化し多様化した過程を再考する。本論文は、近藤j純悟によるコメニウスとルソーの研究の要旨を示した後、1939年に日本人によって初めてコメニウスについて書かれた佐々木秀一（1874-1945）の著書『コメニウス』に特に注目する。