本研究は、話し手の発話行為(speech acts)に対する聞き手の解釈に対して、また話し手によるこれまでの発話行為に対する弁明に対して、パワー(権力)関係(power relations)がどのような影響をおよぼしているのかということを、批判的ディスコース分析(critical discourse analysis, CDA)の観点から考察している。上記の目的を果たすため、本研究は、語用論(pragmatics)、特にAustin(1962)やSearl(1969)の発話行為理論(speech act theory)を援用し、元FBI長官James B. Comey氏によるDonald Trump米大統領との会話メモ、および米上院情報特別委員会の公聴会における同氏の議会証言に関し得るThe New York Timesの新聞記事を取り上げ、Trump米大統領によって遂行されたとされる発話行為を分析している。