フェミニズム理論家であるJ. バトラーは、2000年代以降、従来以上に、エスニシティやナショナリティの問題を主題化し、政府による暴力についても直接的に論じるようになった。本報告は、かかる議論を後期近代の権力論として再読するものである。その際、「身体」の「政治性」に着目した。近年のバトラーについては、ジェンダー・パフォーマティヴィティから倫理一般への「転回」が指摘されてきたが、本報告では、むしろパフォーマティヴィティ概念に立ち返ることで、「政治的身体」の考察を試みた。