1990年代のジェンダー・パフォーマティヴィティに関するバトラーの議論は、彼女をフェミニズム理論家として知らしめることになった。一方、2000年代以降のバトラーについては、「性的マイノリティ」から「他者」一般へと、また理論・思想研究から具体的な政治へと、関心をシフトさせているとの指摘がある。これに対し本報告では、2000年代以降のバトラーと1990年代までの彼女の理論とを、一貫した軸のもとで検討した。このとき、「他者」についての社会理論と政治的実践との関係も再考できる。