近年のバトラーについては、ジェンダー・パフォーマティヴィティから倫理一般への「回帰/転回」が指摘されてきた。これに対し本稿では、「倫理」をめぐる彼女の議論を、パフォーマティヴィティ概念との連続性のなかで考察した。こうした作業によって、「他者」についての社会理論と政治的実践との関係も再考できる。また、現代社会における権力批判のあり方にも言及した。すなわち本稿は、バトラーについての学説研究であると同時に、後期近代における権力論を模索するものでもある。