本稿は、中華人民共和国建国前後の北京新華印刷廠について、その設立時の経緯と実態、及びその後の規模拡大情況を整理・分析し、印刷業の生産力や「公私合営」をめぐる問題などを考察した。最後に、建国初期の製紙業の情況についても紹介し、北京新華印刷廠という事例研究を通して、当時の印刷業と製紙業の状況を垣間見ることができた。もともと脆弱である印刷業と製紙業の再建は「試行錯誤」に近い作業で、曲折を伴いながらも徐々に制度化して拡大していった。(社会主義国家の建設における)「計画経済」の方向性は既定のものだが、当時の「生産力」を求める環境において民間の私営印刷企業(つまり「私営印刷資本主義」)を完全に排除することが不可能であった。そのため、旧国民党政権が残した資源を接収するほか、もともと解放前に都市部印刷業の中心柱である民間印刷企業に対して、うまく統合させたうえさらに再利用する方針が採られた。全体的には、このような改革を進めながら、少しずつ新しい生産体制を作ってその健全化を図った。