本稿では、中国発の舞台芸術である『劉三姐』の日本上演にあたって施されたアダプテーションをめぐる諸問題を分析し、その実態と背景を考察した。日本版『劉三姐』の上演において、千田是也・梁夢廻・林光・ペギー葉山らの個々人と東京労音・俳優座などの諸団体が関与している。日本版の創作プロセスにおいて、舞台衣装の特徴や音楽のスタイルに関する考察から、舞台が全面的に「非中国的なもの」という根本的なコンセプトに基づく製作方針によって仕上げられるたことが分かる。しかし、その裏には、もっと原曲を多く取り入れ、より中国らしさを表現できるような要望に対して、日本版『劉三姐』の創作・上演を担う組織には、そのような力量を備えていない厳しい現実的な事情/制限もあった。