本稿は、2011年3月に発生した福島原発事故以降における、台湾のマスメディアで展開される「核食」論争を取り上げ、事故後の輸出先の1つである台湾現地の日本食品輸入問題をめぐる報道を考察するものである。考察の背景・対象・方法を説明した上、動画共有サイト「ユーチューブ」(YouTube)の動画から「核食」論争の争点を探り、論争の全体像と傾向を把握した。これらの動画から、「核食」論争の争点は多種多様であることが分かった。細部に至る事象を明らかにするため、3つの事例研究を行った。異なるテレビメディアによる番組に鮮明な違いがあったのと一線を画したのは、中央通信社のシリーズ特集記事である。この特集記事は、関わる範囲は広く,報道内容のバランスが比較的よく、また特定の政治立場をとらない姿勢が見られる。残念ながら、本稿で取り上げた台湾における「核食」論争をめぐるメディア報道を精査すると、センセーショナルな手法で制作されたコンテンツも少なくないのは事実である。