本稿は、近代における日中印刷技術史の人的・学知的交流の諸事象を垣間見て、初歩的な考察を行った。第一に、近代中国における印刷技術知識体系の構築と形成において、日本は無視できない役割を果たした。第二に、清末以降、多くの日本人は中国に渡り、印刷企業を立ち上げ、印刷業務を展開した。日系印刷企業は中国印刷業の一部となり、直接・間接に中国印刷業界に影響を与え、人的・物的・技術的にと多方面にわたる交流を加速した。第三に、沈逢吉や孫含英ら中国から日本へ派遣された印刷技術研修生たちは、日本国内の一流印刷企業で体系的な教えを受け、とりわけ印刷工場での実践的な訓練を通して現場の生産経験を積んだ。その後、彼らは当時日本の最先端の印刷技術を中国へ持ち帰り、その後の中国印刷業の発展に重要な技術的基礎を提供しただけでなく、多くの次世代印刷技術者を育成した。