本稿では、『戯劇春秋』の内容や上演情況を整理するうえで、作品のなかで彷彿させる実在の演目・歌・劇場・組織・人物などの確認ができた。また、話劇の改革や話劇界が直面する困難などの複数の側面から、当時の話劇界の諸相及び話劇人たちの日常における喜怒哀楽を垣間見ることができた。そこから分かることは、『戯劇春秋』において浮かび上がらせた話劇界の現象や諸問題を描く際に、「大歴史」の叙述と「小人物」の存在実態を非常に巧みに融合させ、その風景を広げていくという創作手法であり、大きな特徴でもある。