本稿は、日中戦争期の「中央青年劇社」に焦点をあて、『灘上』と『盲者之死』という二つの作品の内容分析を通して当時に行われた話劇脚本創作と上演の実状を考察し、その初期活動の実態と特徴を探るものである。『灘上』と『盲者之死』という二つの作品は、中央青年劇社の比較的に早い時期に創作された話劇作品だが、登場人物やストーリーの展開、そして戦時下における宣伝意図などの各側面において十分な工夫がなされており、のちに大量に現れる戦時下話劇作品に共通している特徴が大いにみられるものである。いずれも未熟さがあるものの、抗戦話劇としては高く評価できる。