『武家義理物語』「身代破る風の傘」(巻二の一)と「御堂の太鼓打つたり敵」(巻二の二)は、二編一連の物語である。また同時に、貞享4年6月に発生した御堂前敵討事件を取り込んだ際物でもある。 『武家義理』刊行直前の事件より材を得た上記二話は、本部実右衛門と島川太兵衛(後に「本立」と改名し、出家)が、阿波新橋での衝突事件により敵討ちへ と展開したため、本作序文の「時の喧嘩・口論自分の事に一命を捨ることはまことの武の道にはあらず」なる一文に矛盾するのではと指摘されてきた。たとえ ば、吉江久弥氏はこの一件を「武