西鶴『色里三所世帯』(貞享5・1688年6月上旬刊)巻上は、玄宗皇帝ならびにその周辺の説話のもじりが集中している。 巻上ノ1では『開元天寶遺事』などで知られる「花軍」をやつして女相撲を催し、巻上ノ3では『安禄山事迹』に由来する 安碌山の産湯説話をやつして美女と湯船につかり、身体の隅々まで洗ってもらう。もとより、 主人公外右衛門が24歳の若さで20人の美女を伴って若隠居を決め込むのは、「天子」の 後宮を再現しようとする試みであった。本発表では、玄宗皇帝説話が『色里三所世帯』趣向とし て用いられているとい