『犬方丈記』は、『方丈記』のもじり作品であるが、その趣向は一部にとどまっている。本作品は、『方丈記』が記した養和飢饉に触発され、天和の飢饉を重ね合わせて執筆された。主人公「今長明」は、全国行脚を果たそうとしながらも、長崎崇福寺での施粥を目撃し、京に帰る決意を固める。大坂・京で数々の施行を見物する「今長明」は、遁世者としての性格に乏しいものの、それらを記録にとどめることで本作品を『方丈記』を継承する作品たらしめた。