宝暦4(1754)年刊『新増書籍目録』にはじめて出現し、次の明和9(1772)年刊『大増書籍目録』にも継続した分類項目であった「奇談」は、以降まとまった書籍目録が刊行されなかったため、動向は不明である。しかしながら、「奇談」を書名に有する書物は陸続と刊行ないし発表されている。その傾向から、①『英草紙』系列の諸作品②地理案内を含む地方説話集③巷説を主内容とする実録系写本に分類されるのではないかと考える。本稿は、この3分類の内容的特性を具体例に即して分析したものである。