故須永朝彦氏が好んでとり上げた『男色大鑑』「執念は箱入りの男」(巻8の3)冒頭部に置かれた作者と思しき語り手による、男色遍歴の告白部分に焦点を当て、近世期の男色が、多くは年上の男性によって力づくで強制された実態に言及した上で、『男色大鑑』における男色描写が幸福に満ちている点を指摘した。