中野三敏氏が提起された「西鶴戯作者説」について、再検討を加えた。当該学説の論拠となった西鶴『好色一代男』「けしたところが恋の始まり」(巻1‐1)に続く「はづかしながら文言葉」(1‐2)にも、世之介の成長が漢籍(『礼記』)に明らかに拠った箇所があり、敷衍しうる点を指摘した。また、文学史的視野が不足しているとの近年の批判に対しても応じた。