『決疑鈔直牒』諸本の実見調査を進める中で、従来寛永九年(1632)中野版の覆刻とされていた慶安三年(1650)版の跋文の問題に注目し、諸本の黒口・字詰めを比較検討した。その結果慶安三年版(杉田・平楽寺)は寛永九年版・慶安五年(共に中野)の覆刻ではあるが、一部元の版木そのものも使用している等、複雑な改版状況にあることを見た。今後諸版本中で最古の寛永六年(1629)版との異同を検討していく。