新羅浄土教者玄一は『無量寿経記』上下を撰述しているが、上巻のみが現存する。『卍続蔵経』で江戸期の写本を底本に活字化されているが、他本には無い文を保有している現存最古の奈良朝写本(書陵部本)を使用していない。本稿では『正倉院文書』等諸目録から該本の伝播を確認し、現存諸本を調査した。結果、現存諸本はすべて書陵部蔵奈良朝写本からの転写であると結論付け、今後書陵部本を中心とした検討が必要であると指摘した。