本稿では聖冏の『決疑鈔直牒』の諸版本を比較検討した。対象は以下の通り。寛永六年版(1629)、寛永九年(1632)中野版と杉田版、慶安三年(1650)杉田版と平楽寺版、慶安五年中野版(1652)、無刊記版本二種、明治十七年版(1884)である。これらを比較検討した結果江戸初期における出版文化の隆盛と、浄土宗僧侶養成道場である檀林形成の時期が重なりながら、『決疑鈔直牒』が固定化していく様相が窺い知れた。